悪徳マルチ商法考・問題点と潜入記…被害者・加害者にならないために

マルチ商法に引っ掛からないための事例

私はマルチ商法の説明会に潜入したコトがある。
まずは、そのときのハナシをしてみよう。

 ソレは突然の電話から始まった

もう十数年前のハナシだが、当時勤めていた会社の忘年会の最中に、突然携帯が鳴った。
電話を掛けて来たのは高校時代の同級生(以下 馬鹿)で、当時も友人としてよく一緒に遊んでいた。
その時の電話はいつもの様子と違って、どうも様子がおかしい。
「○○さん(私…なぜかソイツは私のコトをさん付けして呼ぶ)、凄いんだよ!」
「とにかく凄いんだよ!!」
という言葉を繰り返す。
ナニが凄いんだ?と聞いても、凄いとしか言わない。
とにかく忘年会の最中なので、チンコのついたヤツと長話などしたくない。
目の前には私が狙っている同僚の女の子がいるのだ。
とにかく電話を切ろうとすると、2日後に会って話したいという。
…ネズミか?と見当がつき、面白いので会う約束をする。
電話を切ると上司が「女か?w」とくるので、同級生の馬鹿がネズミを数えてると答える。
上司だけが意味を察してニヤけているが、他の同僚は意味が判っておらず、??となったままハナシは終わる。

 潜入

さて、約束の日。
愛車のHCR32後期(当時は33が出たばかりで4年ローンw)で馬鹿のアパート前に乗り付ける。
まず電話をしてから近くの空き地にクルマを停め、グローブボックスに免許証や財布など持ち物全部を投げ込み、現金のみをポケットに突っ込んで馬鹿と合流する。
行き先は渋谷だ。
最寄り駅から電車に乗り、渋谷に着いて時計を見ると、馬鹿曰くまだ早いらしい。
近くにあったファーストキッチンで朝食をとり、詳しいハナシを聞こうとするが、どうもハナシをはぐらかしてくる。
「マルチか?」と聞くと、違うと言う。
予感が確信に変わる寸前だw
さて、時間になると店を出て、すぐ近くの小汚いビルに入る。
20代後半の兄ィちゃん(以下 馬鹿2)が廊下にいて、ソイツのトコに馬鹿が寄って行くので付いてゆく。
馬鹿が突然
「紹介させて下さい!友人の○○さんです!」
などと大声で紹介する。
馬鹿2はコッチを向き、
「よろしく!××です!○○さんの夢は何ですか?」
ときた。
面白いので
「今はC1と湾岸で遊んでいますが、いつかはミニサーキットを持ちたいですねw」
と返す。
馬鹿2は
「いい夢ですね、叶いますよ」
などと抜かし、ナニかの明細wを見せてくる。
どうも収入を示しているらしい。
前月の収入の欄が1000万を超えている…が、単なる紙切れだw
私は現ナマしか信用しない。
このあとの説明会に出られなくなると、全てが徒労に終わるので
「すごいですね!」
と大袈裟にリアクションをとるw
周りを見渡すと、意外にカワイイ子が多い。
とりあえず何人かのカワイイ子に「紹介」してもらう。
少し話してみると、かなり純粋(騙されやすい)子ばかりだ。
さて、説明会の時間だ。

説明会

200人程度が入るコトのできるホールにOHPが設置されている。
私は一番前の席に陣取る。
司会の男性がシステムや商品の説明と、代表の賛辞を繰り返している。
というよりも、いちいち説明の要点ごとに代表が考案した素晴らしいモノだというような、非常にウザいセミナーだw

システムは以下のとおり。
コースは2つ。
ひとつめは、1万円でスキンケア商品などを「買うだけ」の会員。
ふたつめは、30万円で超音波美顔器を買って、また、「売るコトのできる」代理店契約会員。
当時は訪問販売等に関する法律の時代だったので、2万円以下のコースがあれば合法の時代だった。
現在は特定商取引法の範疇なので、規制は厳しくなっている。
美顔器を販売した場合、30万円のうち5万円が本人に、5万円が親に、その上の親に2.5万円、残額が会に入るというシステムだったと記憶している。
つまり、子や孫が多いほど儲かるという、まさにマルチ商法。
とりあえずセミナーは代表のアジ演説までで終わり。
やはり、代表のアジ演説はウマかった。
ペテン師は、ペラがまわらにゃ立ち行かん。

ココからが本番

さて、私と馬鹿・馬鹿2に加えて30代の男性(以下 馬鹿3)との4人で喫茶店に向かう。
店内で周りを見渡すと、同じような4人組客が数組いる。
まず私は窓際の席に、3馬鹿は私を囲むように座る。
完全に囲まれたw
馬鹿は「どうだった?」などと聞いてくるので、面白かったと答える。
実際、アホどもの馬鹿面ァ拝めて面白かったしw
ココでまた、馬鹿2・3が「ナニかの明細w」を出してくる。
二人とも1千万を超えている数字がある。
もう1枚の紙が机上に追加される。
大本命、所謂「馬鹿のトラップ契約書」だw
ココでひとつ、一度言ってみたかった言葉をぶつけてみる。
「そんな大金(30万)無いしw」
いや、あるんだケドさw
馬鹿が「武○士(Synchronized Love)とかあるじゃん」ときたw
馬鹿のためにサラ金から借りるかってぇの。
見事なまでのコンビネーションを見せる馬鹿トリオw
色々とハナシを聞いて楽しんでいたが、そろそろ飽きてきたので帰るとする。
契約書を書かないと逃げられないらしいw
馬鹿が差し出すボールペンは震えていたwww
しゃぁないので、住所や電話番号は適当に嘘を書いて(このために免許証などを置いてきた)、名前だけは普通に書くww
デンジャラスなんだケドねw
契約書は、馬鹿2が持って行く。
数千万の収入があるクセに、コーヒー300円ずつ割り勘www
そして店外に出て馬鹿1と二人になったタイミングで、馬鹿1に言い渡す。

「マルチじゃないか?と聞いたら違うつったのにマルチじゃねぇか。さっきの契約書、もし提出してソッチから連絡があったら、即刻警察に駆け込むし、別の公的機関にも通報するから、そのつもりでいろ。ヘタなマネしたらどうなるか判ってるよな?」

そう言ってとっとと駅に行き、クルマのトコまで戻り、帰宅。
思いつく限りの共通の知人に「馬鹿が電話をしてきたらマルチだから気をつけろ」と電話をしまくる。
案の定、夜になって馬鹿から電話があり、
「なんで皆に電話するんだよ!」
などと怒り狂っている。
面倒というか疲れたので電話を切るが、すぐにまた掛かってくる。
しゃぁないので、マルチ商法の定義を教えてやると、マルチじゃないという。
じゃぁナンだ?と返すと、連鎖販売取引だと抜かすw
ソレがマルチなんだと言っても違うと返してくるww
面倒なんで「出るトコ出るか?」と言って電話を切る。
コレからは馬鹿からの連絡はなくなったw
一応、後日確認してみると、馬鹿に引っ掛かったのはいなかった。
数ヶ月して電話をしてみると「半年後に3000万入る」だそうでwww

後日談

それから半年くらいして、とあるスーパーの駐車場で、馬鹿を勧誘したコにバッタリ出くわした。
「まだ馬鹿を誘ったマルチやってんの?」と聞くと、馬鹿を入れてすぐに辞めたそうでw
実は、馬鹿はこのコが好きでマルチの誘いに乗り、そのままハマってしまったというのが背景にあるw

ソレから数年後、仕事で夜の銀座にいてヒマしていたときに、馬鹿の携帯番号が目に入った。
番号が変わってないか不安になったが、とりあえず掛けてみると馬鹿が出たwww
「元気か?まだマルチやってんのか?儲かってんのか?」
と聞いてみると、
「半年後に3000万入る」
と抜かすw
何年も前に同じコト抜かしてたよなぁ…と思いつつ、馬鹿に
「私は今の年収600万程度(コレはホントですw)しかない慎ましい生活でガマンしてるよw」
と言うと、馬鹿が悔しそうに「そうか、いいんじゃねぇの?」と返してくる。
「店でトラブルがないと出番が無ぇから、ヒマでしゃぁねぇよw」
と言うと無言w
「まぁ頑張れやw」
とからかうように言って携帯を切る。
ソレ以来、連絡がとれないので、3000万が気になってしゃぁないw

 マルチの見分け方

ある程度の経験を積むと、勘で判るようになってくる。
誘い方で見分けるのがイチバン判りやすいと思う。
予備的な情報を出さずに「○○に行ってみない?」などときたら、マルチだと思ってイイと思う。
そういう誘い方をしてくるのは、マルチか宗教だw
あとは「行くのはタダだから」とか。
行くのはタダでも帰るのには数十万だが、確かに行くのはタダなので嘘ではないw
さらに健康器具などの「効果には個人差がございます」な商品であれば、間違いない。
潰れた店を使って簡易看板で健康器具を売ってるのは、マルチか催眠商法だw
ヤバそうなモノはヤバい。
少しでも不安があればソレに従うべし、不安の的中率は不安の大きさに比例する。

 マルチの問題点

基本からいきます。

マルチの基本

マルチのシステムは、ねずみ講に似通っている。
ねずみ講で有名な組織といえば、やはり天下一家の会だろう。
ねずみ講は現金のやりとりでコレを運営するが、マルチは商品の売買にて運営をする。
そして、共通するのは「親子間での報酬のやりとり」をする点。
現在、多くのマルチ商法組織がある。
ア○ウェイやニュー○キンなどは、非常に巨大化している。
擁護する気はないが、これらの組織が扱う商品は良質だ。
ア○ウェイの会員からハンドクリームなどを貰ったコトがあるが、確かにイイ。
マルチとしてでなく、単純に商品を買うだけなら、私はイイんじゃないかと思ってしまったりする。
但し、マルチとして商売をしようとすれば、コレはハナシが別になる。

意外に思う人もいると思うが、化粧品関連でマルチを運営している会社は多い。
化粧品販売業で代理店を開き、従業員を雇って商品を売らせ、代理店の上に幾重もの代理店が乗ってピラミッドを構成し、従業員に大量の化粧品を「在庫として」買わせ、代理店にして上前をはねるという形態だ。

マルチ商法における最大の問題は、ノルマの存在だ。
ノルマを達成できないと、ペナルティとして代理店契約を破棄される組織が多い。
私が潜入した組織は、30万円もする超音波美顔器を3台/月だった。
相当なペテン師でない限り、コレは無理だと思う。
ノルマが達成できなそうであれば、自腹で買って代理店契約の維持を図る。
リターンが事実上の割引き扱いになるので、25万円で買えるのだが。

もう一つの問題は、子や孫が定着しづらい点。
マルチにおけるオイシい点は、子や孫からのアガリだ。
子が商品を売れば、その時点で数万円の収入が確定する。
そして、子を増やし、ソレが孫を作れば、さらに収入があがる。
だが、先ほど挙げたように、ノルマの問題で子や孫が定着しづらい。
パンフや説明を見れば判るが、あくまで「子や孫が定着した場合」のコトしか書いていない。
つまり、組織が言うような大金は期待できないワケだ。

クーリングオフ問題

現在のマルチにおいて、クーリングオフがきかない場合がある。
というよりも、クーリングオフという制度を悪用している。
クーリングオフが対象としているのは「個人」のみだ。
ソコで、マルチ組織は個人契約をさせないという手段に出ている。
つまり、個人商店をテンプラさせて、契約者名を個人商店にするという手口だ。
この契約が成立してしまうと、クーリングオフがきかなくなる。
つまり、泣き寝入りするしかなくなる。
あるいは、なりふり構わず売って、元手を取り戻すか。

人間関係の破壊

私の場合がそうであったように、多くの勧誘は騙し討ちだ。
騙し討ちを受ければ、当然ながら人間関係は険悪になる。
友人を無くしたくなければ、絶対にマルチに手を出してはいけない。

勧誘方法

マルチ商法でも宗教でも、勧誘の仕方は共通する。
「生病老死」・「縁」・「色」だ。
それぞれについて説明しよう。

  • 生病老死

まずひとつ、マルチ商法で扱われるモノに健康関連商品が多いのは偶然ではない。
仏教において一番の苦とされるのが生病老死。
つまり、生きる・病む・老いる・死ぬという一生に苦悩するというコト。
このうち、病む・老いるというのは、解決可能だと思われている。
健康グッズ・アンチエイジンググッズというのは、生病老死に苦悩する者にとって「救い」と見えるであろう。
そういうトコロに付け込むのが宗教やマルチだ。
宗教は神仏の法を説き、マルチは高価な健康グッズや薬物を売る。
よく、病院の出入り口には宗教とマルチの勧誘がいると、そう言われるのは、皆さんご存知のとおり。
大きい病院の待合室には、必ずと言っていいほどパンフを持ったオバちゃんらがいる。
大きい病院というのは、科ごとに待合室が違うコトが多い。
その中でも、消化器・循環器・ペイン・神経科には「カモ」が多い。
前2つは死に直面する病の可能性が高く、ペインは既に死に直面している人間が多いのと、神経科は耐え難い苦痛に苦悩している人間が多い。
それらを取り除くといって、宗教や健康グッズの勧誘をするワケだ。
重病・難病に苦しむ者と家族は、ナニかにすがりたいという意識が強くなる。
つまり、ある意味での弱点を晒すワケだ。
ソコが付け込むポイントになる。
市場としては、ココが一番大きいのではないだろうか。
ほとんどが弱気に付け込む、汚い方法だ。

コレは一番判りやすい。
家族以外で、親戚や地区の人間にはじまり、同級生・同窓生や昔のバイト仲間などまで「縁」がある、昔からの言葉では「袖振り合うも多少の縁」というモノだ。
私が上に書いたのは付き合いのあった同級生だったが、実際は全く連絡をとっていないのに突然電話を掛けてきたりというのが多い。
というのは、やはり「仲間意識」というモノがあるからだ。
縁というのは、思った以上に強いつながりを生む。
コトが上下関係ならば、なおさらだ。
例えば会社で上司がマルチにハマり、上下関係を利用した強権により勧誘をしてくる場合もある。
あるいは、サークルであったりというのも考えられる。
縁 = つながりであり、多くの組織はコレを最大活用するように指導・教育されている。
現在の縁が希薄であればイイのだが、上下関係が現在進行形である場合、まず揉めるコトになる。

色とは「異性(あるいは同性)との性行為衝動」を利用する方法だ。
よく言う「色仕掛け」や「ハニートラップ」と呼称される行為であり、コレは健康な人間では最大の弱点でもある。
マルチではないが、街角でキレイな女性が大人しそうな男性を「絵の展示会」に誘い、価値の無い絵画を高額で売りつけるというのが判りやすいか。
別のケースで有名な例では、某宗教団体が大学で現役の女子大学生を使ってセミナーに連れて行き、そのまま折伏をするというモノもある。
マルチのセミナーに潜入すると、若くて(大学生?)カワイイ女性が多い。
通常の勧誘マニュアルの他に、そういう女性のための、色を使った勧誘マニュアルというモノがあるという情報もある。
実際に性行為に及ぶコトは稀だ。
「じらす」コトにより引き込むのがミソだ。

  • 勧誘方法は非常に多岐にわたる

以上3つの勧誘方法を挙げたが、他にも色々ある。
まさに千差万別。
書ききれないので、また機会があったら!