海の怖さ

 海の怖さを体験してからでは遅いです

海というのは様々な怖さを秘めています。
アッという間にオロクというコトもあります。
オロクになってからでは遅いんです。
今回は、海の怖さをとりあげてみます。

大前提

まず注意する点で、大前提があります。
ソレは海に背を向けないコト、コレを忘れると命に関わります。
どんな軽作業も、必ず沖の見える方を向いて行ないましょう。
どんなにウネリが小さくて凪ぎた日でも、ウネリの100回に一度は少し大きめな波がきて、1000回に一度は足場を洗うような波が来るんです。
来なかったら、ソレはラッキーだというコト、次回もラッキーが続くとは限りません。
海というのは地球の2/3を占める大きな存在であり、その力は計り知れません。
月に行った人間はいても、海の最深部に行った人間はいないんです。
月よりも遠い世界が、ソコにはあるんです。
そのエネルギーは計り知れません。
海という世界に於いて、人間などというものは木っ端と同じです。
ですから、注意・警戒のし過ぎは無いんです。
その注意・警戒で最も重要なのは、やはり沖を見て大波が来ないか注意し続けるコト、コレしかありません。
少しでも異常を感じたら、すぐ退避です。
万が一のために、ライフジャケットを着ておくのも必須です。
どんなに注意しても、オロクになってしまう場合もあります。
ですが、オロクにならないように注意しておけば、その可能性は低くなるんです。
というコトで、沖に背を向けない、コレだけは厳守してください。
そして、携帯電話はジップ付きビニル袋に入れて行動します。
万が一の通報の為です。

波というのは、水面の上下動を伝播するエネルギーです。
大抵が沖の風などで発生します。
この波が様々な方向からぶつかったりして、このエネルギーは減衰したり増幅したりを繰り返し、ソレが沿岸部に到達するんです。
ですので、波高は常に一定ではなく、必ず常に変化しています。
どんな凪場でも、必ず大きい波が来るんですね。
津波はチョッと事情が違い、水面だけではなくて「海底までを含むエネルギーの伝播」で、ソリトンというパルス状の波形で、非常に安定な状態で長距離を進んでも減衰しづらいモノです。
ですから、ソレを察知できないと…一瞬でオロクです。
波というのは、陸に上がると運動エネルギーが減衰されて位置エネルギーに変換され、その運動エネルギーがゼロになった時に、今度は必ず払い出しの運動エネルギーに変化します。
この払い出しというのが厄介で、陸に上がる前は水面が変化するエネルギーが、陸にあがりはじめると「減速する運動エネルギー」として駆け上がり、次に、払い出すときは「増幅する水の運動エネルギー」に変化し、非常に大きなエネルギーになるんですね。
ですから、水難事故で多いのが、この払い出しに足をとられて流されるパターンです。
一気に沖へ出てしまいますので、浮力材を持っていないと…救助が来る前にオロクになっちゃいますね。
ですから、必ずライフジャケットを着用すべしと。
もし仲間が流されたら、クーラーボックスでもブン投げて浮力材にさせ、足場の低いところに誘導します。
どんな磯でも、必ず砂地や長いスロープ地形の場所があります。
そういうトコロから上陸しないと…例えばシモリ際の段差などですね、そういうトコロでは波によって岩に激突したりして、オロクになる可能性が高くなります。
絶対にやってはいけないのは、泳いで助けにいく事です。
溺れるものは藁をも掴むとはよく言ったもので、必ずナニかに捕まって「その上に乗り上げる」行動をとるんです。
救助者の上に乗り上げて、救助者をロクってしまう事件・事故は意外に多いんです。
ですから、ロクられないように、絶対に泳いで救助という「見た目は英雄的な愚行」は絶対にやめましょう。

もし単独で磯に出て払い出しにさらわれたら…慌てず騒がず気付いてくれるのを待ちましょう。
気休めにホイッスルでもくわえていれば、もしかしたら誰かが気付いてくれるかも…儚い希望ですが。
まぁ、地磯なんていうのは、そう人のいる場所ではないので、気付かれるのはオロクになってからでしょうね。
単独で磯に出るなんてのは自殺行為です。
問題外ですので、コレ以上は書きません。

磯を構成するモノ…そう、岩ですね。
この岩というのは、例えばシモリなどもそうですが、水面下は「タナ」という本棚のような形状をしていて、魚がソコについているんです。
伊勢エビ・アワビ・サザエなども、このタナにつきます。
そしてウツボもw
この岩というのは魚影を濃くし、釣り人のチャレンジ魂を鼓舞するワケですね。
ですが、この岩というのも非常に怖いモノなんです。
例えば私の住んでいる千葉県南部というのは、石灰岩による磯の形成がされており、コレが非常に滑りやすく怖いモノなんです。
濡れていると、磯足袋や磯ブーツ以外では滑りやすく、滑落や転倒による負傷や、最悪の場合はアタマを打ってオロクになってしまうんですね。
実は私も滑落の経験があります。
2m半くらいの高さから、急勾配でスロープ状のトコロをズルズルズル…と落ち、その時に右膝が「ヤバい角度w」に曲がりつつ着地。
まぁナンとか釣りは続行できる程度の痛みだったんで、そのまま2週間程放置したんですね。
その間に膝に水がたまっていたんですが、気にせず釣りに励んだ結果、北風が吹くと痛いという、チョイ壊れた膝になってしまいました。
アタマから落ちてたら、オロクになってはいないにしろ、恐らくは重度障害が残っていたでしょうね。
そういう意味ではラッキーでしたw
火成岩の磯というのは滑りづらいんですが、千葉県には火山がありませんので、そういう磯はありません。
ですから、必ず磯足袋か磯ブーツを着用しないと、非常に怖い思いをするコトになります。
苔の出ている磯は、安全靴でも踏ん張れない程滑るんで、非常に怖いです。
ですから、フェルト底の磯足袋・磯ブーツで行動し、できるだけ苔の無いところを歩きましょう。
横着して最短距離をと苔のあるところを歩く人がいますが、絶対にマネしないでください。
急がば回れ、乾いたルートで安全に釣り座まで歩きましょう。
万が一磯で滑落して負傷した場合、救助を待つ段になって後悔すると思います。
なかなか救助が近寄れないので、ソレだけ痛みに耐える時間が長くなりますから。
まぁ、オロクになってたら関係ないですが。
趣味で磯に出てオロクになっちゃ仕方が無いですので、必ず安全装備で荷物は最低源、単独行動はせずに、数人で団体行動です。
できればピトンを打って、いざというときに掴まれるようにしておいた方がイイかもしれません。

海風は障害物などがないため、平均的に見ると内陸部よりも強い傾向にあります。
風で一番怖いのが、突然吹く突風です。
海というのは天候の変化が激しく、一日中風向・風速が変化しないというのは稀で、午前中が微風でも午後は強風というのは珍しくありません。
地磯などで風が絡むといえば、置いてあった道具が吹き飛ばされて、慌てて拾おうとして滑落などですか。
まぁ、強風になればほとんど釣りにならないので、私ならバンザイして帰ります。
では、どんな場合に強風が怖いかというと…特に注意が必要なのが、ゴムボートで沖の瀬に渡ったときです。
ゴムボートというのは筏と一緒で、浮力材(ゴムボートは空気袋部・筏は木材)のみで浮いており、水没したストラクチュアが無いため、風に煽られるとカンタンにひっくり返ります。
というのは、普通の船であればキールが構成する部分が水中にあり、コレによって横滑りを抑えたり、ロール方向の復元力を持たせてあるワケですが、コレがないゴムボートは横滑りしやすく、もしバウや左右舷が浮いて風が吹き込むと、更にピッチング方向やロール方向に傾き、一気に転覆します。
若しくは、乗員が放り出される「落水」が起きます。
無風でも転覆が多いんですが、風が吹くと余計に悪い方へと向かいます。
ですから、単独行動は避けて、必ず複数人で行動しましょう。
もし一部の人間が落水した場合、まず船尾船外機のペラに注意して一旦離れ、バウの方から近づいてピックアップします。
再乗船が難しい場合は、左右舷にあるロープに掴まってゆっくり曳いて貰いましょう。
もし転覆した場合、船外機がある場合は起こすのが大変ですし、万が一エンジンがウォーターハンマを喰らっていた場合は船外機が動きませんので、ひっくり返っているボートの船底に乗って助けを呼びましょう。
こういうときのために、ジップ付きビニル袋に入れた携帯電話があるんですね。
掛ける番号は、海難通報の118です。
もしGPS受信機やiPhoneを持っていれば、緯度・経度も伝えましょう。
広大な海原でボートひとつ探すのは大変ですから。
ボートの船底に乗るのにはもう一つ理由があって、ずっと水の中だと体力を急激に消費して、いつのまにかオロクになってしまっていた…というのを防ぐためです。
水上に出ていれば、体力の消耗を防げますので。
強風下であれば寒いのは一緒ですが、体力を消耗しても沈まないので、オロクになる可能性が減りますね。
というコトで、突然の強風には充分注意して下さい。

コレは非常に怖いですw
今の竿なんてのは皆カーボンですからね、避雷針背負っているようなモンです。
もし少しでも「ゴロゴロ…」と聞こえてきたら、即中止して帰りましょう。
頭上でピカッ!ときて間に合わないようであれば、竿を寝かせて地べたに置いて退避です。
というか、そんな状態になるまで釣りを続けてはいけませんw
ウキや穂先ばかり見ていないで、常に空や沖の状況を注意していて、ヤバそうだと少しでも感じたら中止するべきですね。
まぁ、沖や空を見ないというコトは、当然周りの様子も見ていないでしょうから、潮の変化にも気付かずに釣れない釣りをしているんでしょうが。
釣りは魚との勝負ではありますが、同時に、潮を利用して魚に喰わせる「潮との勝負」でもあります。
ですから、常に周りの状況を確認しながらの釣りができないとボウズか貧果です。
ですから、当然ながら空や沖の様子は常に確認し、潮変わりを予測し、なおかつ瞬時に察知しなければなりません。
そのときに、雷が鳴るなどの「危険」を感じたら、即刻釣りをやめるという決断が必要になるんです。
コマセがいくら残っていようが、オロクになってからはコマセなんて撒けませんからww
毎年、結構な数の釣り人が雷にやられてオロクになっています。
雷の兆候…ゴロゴロ・ピカッ!・ビリビリのどれか一つでもきたら、すぐに退避して身の安全を確保します。
クルマの中が安全ですので、できるだけクルマから離れないで釣りをしたいですね。
私の場合、基本的にはクルマから近い釣り場を選定します。
ギックリ腰になりやすいんでwww

釣れた魚にも注意する必要があります。
有名どころだと、バリ(アイゴ)・ゴンズイ・オコゼなどですか。
毒のあるヒレを持ち、無闇矢鱈に触るとヒドいメにあいます。
持ち帰るのであれば、必ず毒針を落とす必要があります。
そのままクーラーボックスに入れた場合、予期しないで毒針に触ってしまうコトがあるからです。
また、落とした毒針は、足許に置いておくと事故で触るコトもありますので、必ず海に投げてしまいます。
時期によっては、バリの子供(以下バリ子)が浅場に「海の色が変わるほど」集まってきて、入れ食いになるコトもあります。
いちいちメゴチばさみでホールドして鈎を外さなければならないので、とてもじゃないですが釣りになりません。
一度だけそんな状況でチャレンジしたのですが、とにかく臭いコマセを打ってバリ子を集め、その少し離れた所に仕掛けを投入して、小さめのシマアジ3枚とグレ数枚をあげたんですが、コマセにつられてどんどんバリ子の魚影が濃くなって…さすがに釣りにならなくなりましたw
大きいバリはオイシいですが、さすがにバリ子を喰う気にはなりません。
ヒレを落とすだけでも、もの凄い手間になりますからw
磯ではなく、砂浜で投げをやると、エイが掛かってくるコトがあります。
無闇に触らず、海に帰してしまうのがイイと思います。
もし食べるなら、現場で下処理をします。
コレは尾の元に大きな毒針を持っていますので、まずはニッパでコレを落とし、内臓を傷つけない様に気をつけながら胴を落とし、周りの筋肉組織だけを持ち帰ります。
内臓に毒があるワケではありませんが、アンモニア臭が身に移ってしまいますので。

次に、毒は無いものの、触る時に注意が必要な魚ですね。
チヌ・グレ・スズキなどの、ハリハリの背びれを持つ魚です。
鈎を外すのに掴んだら魚が暴れて背びれのハリハリが手に…などと、痛いメに遭い易い魚です。
タオルを1/4に折って、ソレで掴むのがイイと思います。
私も結構グレにやられたクチですw

歯が強い魚もいます。
代表的なのがフグですねw
毒があって歯も強くて仕掛けを切られる、海に戻すとまた掛かってくるという最悪な魚です。
フグの歯というのは上下顎に2枚ずつあり、とても鋭いものです。
しかも、咬む力がハンパではないので、絶対に噛まれない様にしてください。
ムリだと思ったら、ハリスを切って海に帰しましょう。
さて、次は黄色いアイツwナマダ(ウツボ)です。
潜りの時にコイツと鉢合わせになるコトがよくあって、スゴくイヤ~な気分になりますw
コイツも歯が鋭く、しかもフグのように上品なオチョボ口ではなく、今井美樹のような大口ですww
石鯛釣りなどでは、比較的メジャーな外道じゃないでしょうか。

最後に、毒があって食べられない魚です。
キタマクラを代表に、フグ類ですね。
怖いです。
このあたり、フグ考を読んでみてください。

立ち入り禁止区域

私のホーム釣り場である某漁港では、立ち入り禁止区域が設定されている。
理由は「釣りに掛かるのにテトラに乗らないといけないからですね。
今年の夏、台風で立ち入り禁止の柵が倒壊し、自由に入れるようになってしまいました。
そうすると、地元ではない、都内などから来る釣り人が入るんですね。
立ち入り禁止の看板は残ってるんですが。
見ていると、比較的新しい大型テトラに乗って釣りに掛かる人などがいます。
私は地元で「一応は漁業権を持っている」者なんで、そういう人を注意してもイイんですが、たまに逆ギレするのがいるので放置しています。
まぁ、落ちたら118でもしてやりますが、救助には行きません。
というか行けないんです。
救助は船を出さないと無理な地形なんで。
大きいテトラで海に落ちると、沈んだときにテトラの下に入り込んで出られず、港の船を総動員しても「オロク探し」しかできません。
数日してオロクの腹が膨らんで浮いてくれば、なんとか葬式も出せるし納骨もできるでしょうが、浮いてこなんだら魚と甲殻類の餌です
立ち入り禁止区域というのは、危険だから設定されているんです。
現に過去何体もオロクが出ています。
助かったとしても、探索・救助には船を総動員ですから、エラい額の請求が来ます。
漁師総動員で、油代は勿論のこと、皆その捜索のために仕事ができませんから、数百万は覚悟ですね。
私も組合員ですので、いくら柵が倒壊していても、絶対に入りません。
入らなくても充分以上に釣れますし、入って釣っていた人を見ても、釣れてたのを見たコトがありません。
立ち入り禁止区域だから釣れるという幻想を持って入るんでしょうが、そんな幻想を抱く人はウデの程度も知れています。
というコトで、立ち入り禁止区域で釣りをする人がオロクになっても同情はしませんし、そういう人のせいで釣り場が減れば、文句でも言ってやりたくなりますね。
まぁ、オロクに文句を言っても無駄ですが。

最後に

いかがでしょうか。
海には危険がイッパイです。
この危険さえ避けられれば、とても楽しい釣りになります。
怪我などをしなければ、あるいは遭難(孤立など)しなければ、海というのは大きな恵みをもたらしてくれます。
私が見る限り、若者よりも海に慣れた年配者に無茶が多い様に感じます。
というコトで、海を侮らず、楽しい釣りに励みましょう。

では、良い釣りを~