ライディングテクニック論

 まず乗りやすいマシンを作る

私が重要視しているのは、まずコントローラブルなマシンにセットアップするコト。
現在乗っているGSR400は、コレを念頭にいじってある。

GSR400のパーツやセッティングの変更

私が交換したパーツで重要なのが、ますバックステップとハリケーンセパハン、マフラーと3つ程度、あとはノーマルパーツのセッティングで対応している。
ノーマルパーツでは、Fフォークの突き出し変更と、Rサスのプリロード・ショックの締め込み程度。
最初に行なったのはマフラー交換で、コレにより動きの鈍重さが軽減した。

私は原チャリ小僧時代からずっと2st乗りで、このGSR400の前は’89TZR250後方排気を日常の足にしていた。
買い物などもコレでやっていて、非常に乗りやすかった。
SPキャブを組んだりしたが、あまりにも老朽化したのでGSR400に乗り換えた。
私のセッティングの基本は、この後方排気を目指している。
もちろん基本設計から全て違うので、どうやっても同じにはならない。
だが、セッティングの方向を決めておくのは基本中の基本だ。
後方排気のイイところは、やはり軽快なのにド安定なところだろう。
あのホイールベースの長さがあるからこそ、そしてよく動くサスペンションがあるからこその安定性だろう。

GSRのセッティングはリアから始めた。
まずプリロードとショックの固さを色々変えたが、結局は両方とも一番強いセッティングに落ち着いた。
フロントはキャスタが寝すぎていたので、5mm突き出して対応し、倒し込みがラクになったし、タイトなコーナーでの動きが良くなった。
コレに加えて、タイヤもPilot Power 2CTに変更して、ノーマルでの悪癖である倒し込みの不安定さ(バンク角を探りながらでないといきなり切れ込んだりする)を解消。
そしてバックステップとセパハンでポジションの適正化をして現在に至っている。
このバックステップとセパハンが、かなり「効く」変更だった。
というのも、私の場合、コーナリング時に上体を思い切り伏せ込むクセがあり、ノーマルのハンドルバーでは上体のポジションが悪く、起き気味になってしまって具合が悪いから。
上体が寝たのに腰から下がノーマルだとバランスが悪いし、そもそもノーマルだとステップが前過ぎの下すぎなので扱いづらい。
コレを解消するために、バックステップを装着して下半身のホールド性とステップの踏みがしやすくなった。

ライディングテクニックに必要なのは、まず乗りやすいバイクを作るコト。
まずはコレが基本でしょう。

論理的に走る

まず必要な知識は「六分力」だ。
六分力とは、前後力・左右力・上下力・ローリング・ピッチング・ヨーイングという基本モーメントを指し、バイクの運動はコレら6つの力に支配されている。

まず第一に、発進・加速時の挙動を見てみよう。
クラッチをつなぎつつアクセルをあけて加速すると、まず


1.フロント荷重が抜けてリアが沈み
2.その姿勢で加速してゆく挙動になる

というふうになる。
1はピッチングが起こっていて、2は前後力が働いている。
2を特に説明すると、静止時の位置エネルギーをエンジンの出力= 内燃機関の熱エネルギーで運動エネルギーに変換しているというコト。
コレの逆パターンがブレーキングで、


1.フロントが沈み込んでリアの荷重が抜け
2.その姿勢で減速してゆく挙動になる

というふうになり、やはり2を説明すると、運動エネルギーをブレーキの熱変換で位置エネルギーに変換している。
加減速でやっているコトは、位置エネルギーと運動エネルギーの変換だ。
この前後力位置・運動エネルギーの変換というコトをする時に重要なのはピッチングで、例えばブレーキング・加速時にフロントフォークやリアサスがストロークしなかった場合、ピッチングによるフロントフォーク・リアサスへの過大な荷重がタイヤにのみに乗るカタチになり、すぐにロック・ホイールスピンしてしまって運動エネルギーを位置エネルギーにウマく変換できない。
また、前後力の運動エネルギーが安定した状態 = 巡行時に、例えば路面のピット・デブリ・クレストなどの上下力が発生する様な障害物を乗り越えるときにも、やはり前後サスがフルバンプしてしまったり、あるいはセッティングが非常に固い状態になってしまっていると、余計な上下力や左右力が発生してしまい、安定性が失われる結果になる。
セッティングは基本的に運動が一番安定した状態である
真っ直ぐ走る

コトを前提に行なうモノであり、コレが出来ていない場合には、まず失敗としか言えない。
例えば巡行時にヨレて、常に不安定なヨーイングが出ようとするような状態では、コーナリングでヨーイングモーメントを発生させようにも、まず曲がらない。
コーナリングとは、安定を崩す行為だからだ。

コーナリングを行なうとき、まず曲がりたい方向にバイクを倒して= ローリングモーメントを発生させて、次にキャスタ角により変化するが、このジオメトリ変化によりフロントタイヤがイン側に切れ込み、そして前後力と左右力の比率が変化して、そのベクトル上のラインをなぞるようにヨーイングを含む運動が行なわれる。
この時に重要なのは、コーナリング時にも前後力が関係してくるコト。
そして前後サスペンションのバンプが行なわれるというコト。
安定したバイクであれば、このコーナリングがスムーズに行なわれる。
だが、不安定であればスムーズにはならない。
なぜか?
不安定な状態では常に操舵に修正を加えているため、倒し込みの開始時点で舵が当てられていると、倒し込めずにアンダーを出すか、急に切れ込んでオーバーステアになるかのいづれかになる。
つまり、元々不安定な状態を「コントローラブルな不安定」にするのは難しいというコト。
そう、コーナリングとは
コントローラブルな不安定という挙動の支配

というコトだ。
コレを理解しないと、絶対にセッティングがウマくいかない。
コーナリング性能をあげるには、まず直進性を出さなければならない。
ココまでが大前提。

アンダーステアとオーバーステア

カンタンなハナシから入ろう。
バイクの評価で必ず出るのが、アンダーステアとオーバーステアだ。
アンダーステアとは、ステア時の操舵角が描く弧の理論値よりもヨーイングモーメントが小さくて大回りをするもの。
オーバーステアとは、舵角よりもヨーイングモーメントが過大になり、結果として小回りか発散(スピン)に結びつくもの。
通常、市販される車両は、工場出荷時のセッティングがアンダーステア傾向になっている。
コレは、アンダーステアは減速やステアリング操作にて回復しやすいのに対して、オーバーステアはカウンタを当てたりアクセルの高度な操作が必要だからというのが大きい。
実際、もし転倒を前提とするならば、アンダーステアでであればフロントからコケるので、ライダー自身は滑走する程度で済むが、オーバーステアでは不用意にアクセルを戻した場合、急なリアタイヤのグリップ回復によりリアタイヤ接地面を中心とする急激なローリングモーメントであるハイサイドが起こり、この場合、最悪の場合はライダーが数メートル跳ね上げられて地面に叩き付けられたりと、重篤な事故になる可能性がある。

さて、では実際に工場出荷時の車両がアンダーステアで曲がらないかといえば、そんなコトはない。
乗り手のウデのファクタの方が大きいと思う。
一番多いのが、上半身を力んでしまってセルフステアを殺しているパターン。
次に、フロントに掛かった荷重を抜いてしまっているパターン。
更に旋回完了前、アクセルのワイドオープンをしすぎているパターン。
あるいは突っ込みすぎてラインが苦しくなっているパターン。
まだまだ色々ある。
オーバーステアもまた然りだ。
殆どのバイクは安定方向に振ってある。
では、なぜサスペンションセッティングの変更をしたり、ポジションの調整をするかといえば、安定方向に振ってあるノーマルセッティングというのは「万人向けの無難なセッティング」だからだ。

もう一度書くが、私がGSRで変更を行なった箇所は、まずリアサスのプリロードとショックのセッティング変更・フロントの突き出し5mm増し・バックステップ化・セパハン化くらい。
あとはタイヤをPilot Power 2CTにしてマフラーを軽量なタイプに変更したくらい。
このセッティング方向は、あくまで「クイックさ」を狙ったモノであり、昔のレーサーレプリカのような、スパンッとバンクさせてクイックに曲げたいから。
ポジションも、コーナリング時にかなり前傾するクセがあるので、純正バーハンが競合車種とで比較的低いとはいえ、やはり高すぎるし手前すぎたため、XJR1300用のハリケーンセパハンを流用してポジショニング。
ステップ位置もコーナーで外足を蹴るには低く前過ぎていて、どうもシックリこないのと、ヤフオクなどに出ていた簡易バックステップではステップ位置の変更ができないので、4つのポジショニングが出来るアグラスのバックステップを使うコトで納得できるようになった。
私がこのバックステップを買ったのは価格改訂前なので、12万以上したが、ソレだけの価値はあった。
このセパハンとバックステップにより、私にとっては非常に乗りやすいバイクになった。
また、コントロールがラクになったので、力みがなくなってアンダーステアを出す頻度が激減した。
あと気に入らないのはシート形状とタンク形状で、コレについてはどうするか考え中。
コントロールのしやすさは、アンダーステアやオーバーステアの軽減につながる。
ぜひやってみてほしい。
アンダーステア・オーバーステアだとバイクを評価する前に、まず自分のウデを評価したい。

アクセルコントロール

私は2stばかり乗っていたので、スロットルコントロールがエンジンの回転数とシンクロするようなクセがある。
2stでは、ガバ開けをすると息付きを起こしたり、最悪の場合はカブったりするので、アクセル開度をエンジンの回転数などとシンクロさせる必要がある。
現在私が乗っているGSR400は、電子制御インジェクションと、同じく電子制御・モータ駆動のサブスロットルバルブが備わっており、ガバ開けしても、サブスロットルが最適と思われるスロットル開度を保ってくれるようになっているので、カブったり息付きやドン付きを起こしたりしない。
だが、一気に開けるとやはり若干のレスポンス遅れが感じられる。
人間とは面白いもので、感覚は0.1秒程度のズレを感知できる。
ソコから筋肉が反応できるのは0.5~1秒の時間を要する。
感覚的なズレは、特に高速走行中で問題になる。
高速を含む殆どのシチュエーションでは、パーシャルは長く続かない。
大抵が加減速を繰り返している。
高速走行中にコンマ数秒の感覚のズレがあった場合、やはり集中力が若干ながらソッチへ行ってしまう。
また、パワーがあるバイクほど、高速走行中の不用意なガバ開けや急激なスロットルオフで挙動を乱す。
スリッパリークラッチが付いていようと、やはり乗り手がコントロールできるならコントロールすべきだ。
ABSもスリッパリークラッチもトラクションコントロールも、元々はエマージェンシー用であり、本来は全て乗り手がコントロールしてバイクを自分の制御下に置くべきだ。
特に高速度になるほど、緻密なスロットルワークが要求される。

まず第一に必要なのは、エンジンの回転数とスロットル開度をシンクロさせるコト。
キャブ車では必須だが、インジェクション車でも必須となる。
特に小排気量車は重要で、ガバ開けするとスロットルまわりでの吸気流速が落ちてしまい、パワーを出せない状態になる。
この吸気流速というのは重要で、エンジンの充填効率に影響する。
エンジンの充填効率というのは、吸気される空気というのは、排気量400ccなら400ccの空気がシリンダに入るワケではない。
排気行程と吸気行程のオーバーラップで排気と吸気が同時に行なわれる短い時間にはまず排気が吸気を引っ張り、排気バルブが閉じた後はピストンが下がるコトで吸気され、この時に吸気の流速が高いほど充填効率があがり、400ccを超える吸気となる。
回転数に応じて必要な空気量が違うという前提があり、例えば充填効率100%・排気量400ccで1000rpmと13000rpmで計算してみると、1000rpmでは毎分100リットルで13000rpmでは毎分1300リットル必要となる。
この空気が通る吸気系で、可変吸気ポートや可変バルタイは別にして、通常可変なのはスロットルだけだ。
そして、このスロットルこそが吸気のボリュームを制御するモノであり、アクセル開度で吸気ボリュームとベンチュリー効果ボリュームを変化させてエンジンを制御するワケだ。
つまり、100リットルしか必要ないのに1300リットルを通せるようなスロットル制御では、必要なベンチュリー効果のボリュームが得られず、吸気流速が遅いために充填効率があがらず、結果としてパワーが出ないし遅い。
例えばアクセル開度50%程度でパーシャルにしてみれば判るが、エンジンは定回転をする。
つまり、コレが無負荷時でバランスのとれた状態と言える。
ガバ開けは、百害あって一利無し。
必ず回転数に応じたアクセル開度を心掛けて欲しい。
閉じる時も一緒。
一気に全閉も百害あって一利無し。
急激なエンブレは、リアの挙動を乱す。

視線

アクセルコントロールの次といえば、通常はブレーキコントロールだろう。
だが、敢えて先に視線を書いてみる。

多くのライダーは行きたい方向に視線を送っていると思う。
ただし、全員がアタマがキッチリ向いているかといえば??だ。
コーナリング時には、必ず行きたい方向にアタマを向けてやると、自然に上半身の動きが大きくなり、キレイに曲がるコトができる。
私はコーナリング時に重いきり伏せ込むクセがあり、攻めている時は斜め上を見上げている様な格好になる。
視線の移動だけでは見通しが利かないので、どうしてもアタマを動かすようになる。
そして視線はコーナーの出口、立ち上がりのラインの向こう側になる。
要は、かなり先を見ているというコトになる。
コレは直線でも一緒で、例えば私は一般道ではすぐ前のクルマをあまり見ない。
見るのはその向こうのクルマなどの動き。
視線を遠くにしようとすれば、まず車間距離と走行ラインが重要になる。
前のクルマに近づきすぎると、どうしても視界が遮られる率が高くなる。
私の場合、車線中の左右のどちらかに寄って車間距離をとって視界を確保する。
車間距離を開けるのはもう一つ理由があって、追い越しを掛ける時に必要な加速を得るため。
一般道・高速での車間距離の目安として、私は2秒~5秒程度のギャップを保つコトでコレにしている。
つまり、前走車があるポイントを通過してから、2~5秒後に自分が通過するというコト。
万が一の回避行動をとるのに必要な距離は速度に比例し、人間とバイクの反応速度を考えると、最低限で2秒は必要であり、コレではギリギリになりやすいので、状況によって時間を長くとる。
充分な車間距離があれば、その先も比例して長く見通せるというメリットもある。
視線とは、あくまでも進行方向の状況を見通すモノであり、こういう危険回避のための方策も視線といえる。

コーナリング時の視線は、パイロンで定常円でもするのがイチバンだと思うw

ブレーキング

私はあまり突っ込みを重視しない。
正直、ヘタレというのがデカいがwww
ブレーキング時のラインは、思い切りアウトになど寄らずに車線の中央より少しアウト側…くらいのトコで砂などを避け、あとはインベタで曲がれるようにする。
ブレーキの効きは、フロントはガッチリ効くようにするが、リアはまぁとりあえず減速できる程度で、姿勢制御のために使う程度。
エンブレも使うが、元々2st乗りなので軽く効かせる程度。
正直、ブレーキングはヘタだwww
ただ、エマージェンシー時は何故かウマく停まれるのが不思議なトコロ。

コーナリング時に必要な技術は、ターンイン前に減速を終わらせるのが鉄則で、あとはブレーキを残しつつ…なんてのは、当たり前すぎて書く気にもならない。
ただ、怖いのがコーナリング中に対向車などのせいでブレーキを掛ける時。
大抵がフロントを握り込んで、バイクが起きてアンダーを出すか、握りゴケするかだ。
コレを避けるためにも、ブラインドコーナーは突っ込みすぎない・先の見えるコーナーではミドル~インベタでラインをとるか、そうやって限界まで攻め込まないコトだ。
ブレーキング時に重要なのは視線。
ターンイン直前に対向車が出てきて、ソッチに気をとられてターンインが遅れて…なんてのはよくあるハナシ。
まぁ、どヘタな私に書けるのはこの程度w

というコトで

他のファクタは、また気が向いた時に。